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京都市同和奨学金無審査肩代わり訴訟の訴状
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訴   状

平成14年12月18日


同和奨学金賠償命令履行請求事件

【請求の趣旨】

1 被告は、別紙損害賠償義務者目録記載の1ないし16の者に対し、連帯して、金7億2796万5395円及びこれに対するうち1億0945万1900円については平成10年4月1日から、1億2678万1005円については平成11年4月1日から、1億4399万8690円については平成12年4月1日から、1億6463万0105円については平成13年4月1日から、1億8310万3695円については平成14年4月1日から各支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払うよう賠償を命じなければならない。

2 訴訟費用は被告の負担とする。

 との判決を求める。

【請求の原因】

第1 当事者

1 原告は、京都市民である。

2 被告は、京都市の長(執行機関)である。

第2 損害賠償義務者

1 損害賠償目録1記載の者桝本頼兼は、京都市長の職にあり、1997―2001度の自立促進援助金経費支出決定の最終決定者として、同援助金支出決定にかかわった。

2 同2記載の者中谷佑一は、京都市副市長の職にあり、1997―99年度の自立促進援助金経費支出決定にかかわった。

3 同3記載の者武居桂は、京都市収入役の職にあり、1997―98年度の自立促進援助金経費支出決定にかかわった。

4 同4記載の者溝郁生は、京都市文化市民局長の職にあり、1997年度の自立促進援助金経費支出決定にかかわった。

5 同5記載の者大谷博は、京都市文化市民局同和対策室長の職にあり、1997年度の自立促進援助金経費支出決定にかかわった。

6 同6記載の者大槻泰は、京都市文化市民局同和対策室部長の職にあり、1997年度の自立促進援助金経費支出決定にかかわった。

7 同7記載の者加納則章は、京都市文化市民局同和対策室管理課長の職にあり、1997年度の自立促進援助金経費支出決定にかかわった。同じく、京都市文化市民局人権文化推進部同和対策課長の職にあり、1998―99年度の自立促進援助金経費支出決定にかかわった。

8 同8記載の者坪倉讓は、京都市文化市民局長の職にあり、1998―99年度の自立促進援助金経費支出決定にかかわった。

9 同9記載の者西島篤行は、京都市文化市民局理事の職にあり、1998―99年度の自立促進援助金経費支出決定にかかわった。

10 同10記載の者上原任は、京都市文化市民局人権文化推進部長の職にあり、1998―99年度の自立促進援助金経費支出決定にかかわった。

11 同11記載の者松井珍男子は、京都市収入役の職にあり、1999―2001年度の自立促進援助金経費支出決定にかかわった。

12 同12記載の者高木壽一は、京都市副市長の職にあり、2000―01年度の自立促進援助金経費支出決定にかかわった。

13 同13記載の者中野代志男は、京都市文化市民局長の職にあり、2000―01年度の自立促進援助金経費支出決定にかかわった。

14 同14記載の者木野村峯一は、京都市文化市民局理事の職にあり、2000―01年度の自立促進援助金経費支出決定にかかわった。

15 同15記載の者伊藤忠夫は、京都市文化市民局人権文化推進部長の職にあり、2000―01年度の自立促進援助金経費支出決定にかかわった。

16 同16記載の者真下弘三は、京都市文化市民局人権文化推進部同和対策課長の職にあり、2000―01年度の自立促進援助金経費支出決定にかかわった。

第3 公金の違法支出

1 事実関係

(1)京都市は1984年度より、地域改善対策奨学金及び就学奨励金(以下「同和奨学金」と略)貸与者の貸与終了後からはじまる同和奨学金の返済を全額肩代わりしている。これは「自立促進援助金支給要綱」(以下「本件要綱」と略)にもとづき支出されたもので、「同和関係者の子弟の自立を促進するため」(本件要綱第1条)、「その属する世帯の所得、就労等の生活実態から貸与を受けた奨学金等を返還することが困難であると市長が認めたものに対し、支給する」(同第2条)という制度(以下「本件制度」と略)である(甲第1号証参照)。本件制度を所管する市文化市民局人権文化推進課がまとめた資料によると、自立促進援助金(以下「本件援助金」と略)の支給額は、1997年度・1億0945万1900円、98年・1億2678万1005円、99年度・1億4399万8690円、2000年度・1億6463万0105円、2001年度・1億8310万3695円で、この5年間だけで7億2796万5395円にのぼる(甲第2号証参照)。

(2)ところが、同和奨学金を貸与者みずから返済しているケースはこれまで1例もない。つまり、同和奨学金貸与者全員(あらかじめ国の規定により同和奨学金返済を免除されたものをのぞく)にたいして、自立促進援助金を支給(つまり肩代わり)しているのである。

(3)また、京都市は、本件制度の申し込みを同和奨学金貸与者から受け付ける際、貸与者やその属する世帯が返済困難であることを証明する所得や健康状態などに関わる書類の提出を求めておらず、本件制度による本件援助金の支給を決めている。さらに、同和奨学金の返済は最長20年分割でおこなわれるが、返済初年度に本件援助金の支給を決定すると、以後20年間、いっさい何の追加審査することなく支給を継続している。

(4)1997〜2001年度における各年度の本件援助金の経費支出決定関与者は以下の通りである。

▼1997年度(本件援助金額・1億0945万1900円):京都市長桝本頼兼、中谷佑一、武居桂、溝郁生、大谷博、大槻泰、加納則章

▼1998年度(同1億2678万1005円):京都市長桝本頼兼、中谷佑一、武居桂、坪倉讓、西島篤行、上原任、加納則章

▼1999年度(同1億4399万8690円):京都市長桝本頼兼、中谷佑一、松井珍男子、坪倉讓、西島篤行、上原任、加納則章

▼2000年度(同1億6463万0105円):京都市長桝本頼兼、高木壽一、松井珍男子、中野代志男、木野村峯一、伊藤忠夫、真下弘三

▼2001年度(同1億8310万3695円):京都市長桝本頼兼、高木壽一、松井珍男子、中野代志男、木野村峯一、伊藤忠夫、真下弘三

2 違法性

 原告は、同和奨学金制度が果たしてきた歴史的役割を認めるものである。また、一般論として、返済が本当に困難な貸与者に対して、行政が何らかの救済策を講じること自体、否定するものではない。しかし、本件制度及び本件援助金の運用、支給状況は、以下のべる通りでたらめ極まりないものであり、本件要綱の「同和関係者の子弟の自立を促進するため」(第1条)という趣旨からも大きく逸脱する違法なものである。

(1)貸与者全員を「返還することが困難」であると根拠なく一律に認めていること

 京都市は、同和奨学金貸与者及びその属する世帯の収入状況、家庭状況にかかわりなく、何とか返還するよう当人に直接働き掛けることも、文書等で周知することもなく、一律に「返還することが困難」と断じ、本件援助金を支給している。またその際、「返還することが困難」であることを証明する書類、たとえば所得証明、源泉徴収票などの提出を求めていない。そもそも京都市は、同和奨学金の貸与希望者を募集する文書にも、この奨学金が貸与制度であり、卒業後返還しなければならないことは一言も記載していない(甲第3号証参照)。それゆえ、貸与者の多くは、この奨学金が貸与金であり、自分は将来返済義務を負うことを認識していないのである。

(2)ひとたび本件援助金の支給を決定すると、以後20年間にわたって「返還することが困難」であるとやはり根拠なく一律に認めていること

 かりに、本件援助金支給申請時において、当人が「返還することが困難」である状況にあったとしても、その後安定した収入を得るようになる可能性は十分考えられる。ところが京都市は、ひとたび本件援助金の支給を決めると、以後、文字通り何の審査もなく全員を「返還することが困難」であると認定し続け、20年間にわたって分割して同和奨学金の返済を肩代わりし続けている。前記(1)以上にでたらめな公金の支出であるといわざるを得ない。

(3)貸与者の自立を阻害していること

 この20年間で京都市内の同和地区の状況は大きく変わった。地区によっては生活保護世帯が多いのは事実だが、同和地区だからといって、総じて生活に困窮している状況にはもはやないことは、京都市自身が認めていることだ。また、長年にわたる京都市の同和施策により、大勢の同和地区住民を京都市に雇用してきたこともあり、今や地区有業者のうち40%が公務員という状況である。同和奨学金貸与者及びその世帯にも大勢の公務員(京都市職員)が含まれているのが現状である。京都市は本件制度と本件補助金を地区の実態を無視して運用していることは明白であり、これは本件要綱の「同和関係者の子弟の自立を促進する」どころか、逆に自立を阻害してしまう結果になりかねないまったく違法な公金支出である。

(4)京都市監査委員による意見

 後述の通り、原告は本件提訴に先だって京都市監査委員に住民監査請求している。監査結果は請求を棄却するものであったが、監査結果とは別に、監査委員の合議として、市長に対して次のような意見を付記している。すなわち、本件制度の運用について、「制度のより一層の公平性、平等性の確保の観点からは、客観的な証明に基づき、支給の申請のあった一人一人について、適時に支給要件を満たすか否かを判断していくことが望ましく、そのことが支給要綱の規定の趣旨にもより合致するものであると考えるので、事務の改善について、検討を行われたい」(甲第4号証13ページ)

 監査委員も、現状の問題点を厳しく批判し、改善を求めているのである。

 しかし、本件の違法性については認めておらず本訴に及んだものである。

3 損害

 別紙賠償義務者らの違法な公金支出により、京都市には、支出された公金に相当する損害が生じた。

4 よって、別紙賠償義務者らは、損害金について、連帯して、賠償義務を負担しなければならない。
 
第4 住民監査請求

 原告は2002年9月20日、京都市監査委員にたいし、1997―2001年度の本件援助金の支出は公金の違法支出であるとして、地方自治法第242条第1項の規定にもとづく住民監査請求をおこなった。これにたいし、京都市監査委員は同年11月18日付で、同監査請求を棄却する旨の通知をおこない(甲第4号証)、原告は同監査結果を11月20日に受け取った。

第5 結論

 上記のとおり、被告は、別紙賠償義務者目録1ないし16記載の者にたいして、上記損害賠償を命じなければならない。よって、請求の趣旨記載のとおり訴えを提起するものである。

証拠方法

 甲第1号証 自立促進援助金支給要綱
 甲第2号証 自立促進援助金の状況(決算)
 甲第3号証 進路支援事業の適用判定のしおり
 甲第4号証 監査結果通知書

別紙損害賠償義務者目録

 (略)



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