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早くも頭もたげる「うやむや」体質 〈同和〉という病い(5)

【マリード157号 2008年7月25日 初出:『ねっとわーく京都』2007年7月号】市職員の犯罪・不祥事で迷走を続けた2006年度の京都市だったが、いまだその泥沼から抜け出すことができないでいる。4月26日に開かれた「信頼回復と再生のための抜本改革大綱」推進本部会議で、桝本頼兼市長は、これまでの断固とした指導の結果、「京都市の問題職員はゼロになった」と成果をたたえた一方、「事なかれ主義を一掃し、ウミを出し切ったと言える状態ではない」ことも指摘した。

その実証例の一つが、4月(2007年)に入って新聞報道で明らかになった環境局山科まち美化事務所職員による介護・育児休暇の集団不正取得事件であろう。マスコミ報道は単発ニュース扱いでしかなかったが、事件の背景を調べていくと、「ウミを出し切ったと言える状態」どころか、逆に、組織をあげてウミを隠蔽しようとする、相も変わらぬ京都市の姿が浮かび上がってきた。

子どもいないのに育児休暇
高齢者いないのに介護休暇

京都市職員の年次有給休暇(年休)は20日。年休は1日か半日単位でしか取得できない。つまり所用で一時間程度早く帰宅しなければならないときでも、半日(4時間)休まなくてはいけないしくみだ。

ただし、2003年度より「時間休」制度が導入され、就学前の子どもか日常的に介護を必要とする家族がいれば、育児や介護を理由に一時間単位で定期的に年休を取得できるようになった。時間休8時間取得で年休1日分消化したと換算される。小さな子どもやお年寄りを抱える職員にとっては、ありがたい制度だと言えよう。

時間休を取得するには、原則として医師の証明書などを添えて事前に申請する必要があるが、家族に小学生以下の子ども、65歳以上の親がいれば、その看護などの理由で、年5日=40時間まで時間休が認められる「特例」規定がある(2007年度より年7日=56時間に改正)。この場合、申請は口頭だけでよく、事後も証明書等を提出する義務はない。

山科まち美化事務所では、この「特例」規定が悪用されていた。家族に対象となる子どもや親がいないのにもかかわらず、恒常的に時間休を取得する職員が大挙いたことが判明したのだ。京都市は2007年3月29日付けで、不正取得していた11人(男性9人、女性2人)を厳重注意処分に、事務所所長ら管理職7人を管理監督責任が不十分だったとして文書訓戒処分とした。同時に不正取得していた時間休1回につき年休半日分を消化したと換算して処理し、これにより規定の年休日数を超えた職員3人については、給料減額とした。

同事務所職員126人中65人が2006年度だけで時間休を計688時間取得、不正取得と認定された11人の合計は121時間で、上限となる40時間まで不正取得していた職員もいた。

隠蔽しようとしたのか

ここで大きな疑問がわく。口頭による申請だけで認められることを悪用し、くり返し年休を不正取得しておきながら、なぜ停職や戒告などの懲戒処分ではなく、「厳重注意」というもっとも軽い譴責(けんせき)処分ですませたのか。

山科まち美化事務所職員の処分が行われた同じ日、環境局クリーンセンター所属の職員が減給半日の懲戒処分を受けている。総務局人事課の広報資料によると、この職員は年休をすべて消化していたのにまだ残っていると「誤信して」勤務を休み、「結果として事故欠勤となった」というのが処分の理由だ。

制度を悪用して年休を不正に取得し続けた職員と、年休がまだあると思い込んで休んでしまった職員とでは、どちらが悪質か。

「厳罰主義」だけで現在の京都市が抱えている問題が是正されるとは思わないが、公平さを欠く処分だと感じざるを得ない。年度末にまた大量の懲戒処分者を出すことによって市当局がこうむるダメージを回避するために、うやむやに処理してしまおうという意図がはたらいているのではないか。

山科まち美化事務所の時間休集団不正取得事件は、市長自身、冒頭でふれた「信頼回復と再生のための抜本改革大綱」推進本部会議で「公務員としての認識が不十分な職員も残っている」ことの事例として引き合いに出すほど重要視されているが、事件の存在自体、京都市は京都新聞が独自取材で報道するまでは、いっさい公表しなかった。このことを見ても京都市の隠蔽の意思を感じる。

懲戒処分としなかった理由について、京都市はこう説明している。

「時間休制度の趣旨が職員に周知されていなかった。実際のところ、介護や育児を理由にしなくてもとれるものだという認識が職場内に浸透していた。よって不正をした職員よりも上司への処分を重くした」(総務局監察室)といい、

「所属長の話では制度の要件は説明していたとのことだが、それが職員側には理解されいなかった。職員も管理職も不正が行われているという認識はなく、懲戒の対象としなかった」(環境局環境総務課)ということだ。

「犯意」がなかったことを強調している。

「早帰り」対策に使われていた?

山科まち美化事務所の複数の職員から話を聞いた。時間休不正取得状況は、当局側の説明とはかなり食い違う。

職員の話を総合すると、次のような実態だった。時間休を利用していた職員のうち半分程度は子どもや親の看護のための制度だとは理解していなかった。不正行為を認識していた職員も所定の年休の範囲内で休んでいるということで罪悪感も弱かったという。これは当局側の説明と一致する。

だが、新たな問題点も指摘する。まち美化事務所でのいわゆる「早帰り」問題が取り沙汰されるようになったことを受け、所長らは早帰りをやめさせるのではなく、一部の職員に対しては時間休を取得させることで不正常な状況を取り繕うとした面があったという。

また、所長らが不正に取得されている事実に気がつかなかったことはあり得ない話だともいう。一人暮らしをしていることがはっきりしている職員に対しても無理矢理認めさせられたケースもある。こんな運用でいいのかということが職場内で話題になることもあったというのが実際のところだ。所長らは何も手を打とうとしなかった。つまり、所長をはじめ職場のかなりの部分が不正であることを認識しながら、見て見ぬふりをしてきたというのである。

今回管理監督責任を問われ文書訓戒処分を受けた管理職の一人にも一応、事情を聞いてみた。

「指導、説明不足だったことは認めるし、反省もしている。しかし時間休が不正に取得されていたとは思っていなかった。職員との信頼関係でやってきたつもりだ」

と不正を認めてきたことを否定している。


事なかれ主義いまだ蔓延す

ところで、同まち美化事務所のある職員は、こうも指摘している。

「責任は現場の所長や職員だけにあるのか。局としてもこんな運用の実態を半ば察知していながら黙認してきたのではないのか」

まち美化事務所から環境局環境総務課に対して、職員の勤務状況、年休承認状況などは毎月報告されるが、育児・介護のための時間休取得状況も当然報告されているからだ。

別表(京都市人事部給与課作成資料)の通り、市内11か所あるまち美化事務所の中で、時間休を承認しているところはほぼ山科だけだったといってよい。同事務所の時間休取得に疑義があるとし、環境局が調査しはじめたのは今年になってからだ。当然もっと早く気づいていたのではないか。

「事務量が多く、異常に気づくのが遅れたが、局として不正を黙認していた事実はない」(環境総務課)

環境総務課の説明によると、山科まち美化事務所での時間休不正取得は2006年末まで続いたという。環境総務課や事務所長らがいつから問題を認識していたかはともかくとしても、毎日のように京都市職員の犯罪、不正、異常な勤務実態などに対し、市民から批判を浴び続けながらも、年度末まで是正できなかったこと、そして実態をマスコミに握られるまで自ら公表しなかったこと自体、市長が嘆くとおり、市には依然として「事なかれ主義」がいまだ蔓延していると感じざるを得ない。

「〈同和〉という病い」目次

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